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研究留学報告

カテゴリー: NEWS 
2026.04.07

セントルイス・ワシントン大学での研究留学

 

Washington University in St. Louis, Division of Nephrology

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科

 松井賢治 

 

1.はじめに

このたび、国際先導研究「腎臓を創る」のご支援を受け、米国セントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis, WashU)Division of Nephrology の Benjamin D. Humphreys 先生の研究室にて研究留学の機会をいただいております。このような貴重な機会を賜りましたことに、心より感謝申し上げます。

 

2.海外研究留学を志した理由

大学院時代には、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆教授の研究室で、腎臓再生・異種移植に関する研究に取り組んでまいりました。大学院修了に際し、腎臓研究の最前線に身を置き、より広い視点から研究を深めたいと考えるようになりました。

留学先を探す際には、single-cell 解析や空間トランスクリプトーム解析などのドライ解析を実践的に学べること、また、これまでとはやや異なる分野に挑戦して研究の幅を広げられることを重視しました。実際に米国で研究生活を始めてみると、研究のスピード感、多様な研究者との交流、そして一人ひとりが高い独立性を持って課題に向き合う姿勢に、大きな刺激を受けています。

 

3.滞在先で取り組んでいる研究

現在は、障害後の近位尿細管に出現する failed-repair proximal tubule cell(FR-PTC) に着目し、その形成・維持に関わる転写制御機構の解明を目指しています。培養細胞、マウスモデル、RNA-seq、エピゲノム解析、近接依存性プロテオーム解析などを組み合わせ、急性腎障害(AKI)から慢性腎臓病(CKD)への移行において FR-PTC が果たす役割を検討しています。Humphreys 先生は、single-cell 解析を活用して腎障害後の修復・線維化の仕組みを明らかにしてきたこの分野の第一人者であり、先生のもとで研究に取り組めることは非常に大きな意義があります。

さらに、大学院時代に山中修一郎先生のもとで確立した新規アポトーシス誘導モデルマウスをHumphreys 研究室に導入し、現在はその実験系の立ち上げも進めています。国際先導研究の枠組みを通じて、慈恵と WashU の間で共同研究の基盤を築くことができたことを大変意義深く感じており、今後さらに発展させていきたいと考えています。

 

4.研究環境

Humphreys 研究室には、アメリカ、カナダ、インド、中国、日本など、さまざまな国から多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっており、日々の会話や交流からも学ぶことが多くあります。Humphreys 先生をはじめ、研究室のメンバーには渡米直後から現在に至るまで常に気にかけていただいており、安心して研究に取り組むことができています。定期的に BBQ などの交流の機会もあり、ラボメンバーとの親睦を深めることができています。こうした場を通じて、研究室の一員として温かく迎え入れていただいていることを実感しています。

また、WashUには core facilities が整備されており、トランスクリプトーム解析、遺伝子改変マウスの作製など、さまざまな分野の専門家に相談・依頼できる体制が整っています。加えて、世界的に著名な研究者によるセミナーを日常的に聴講できることも、大きな刺激となっています。

 

5.留学先としてのセントルイス

セントルイスは、物価が比較的安く、穏やかな環境の中で生活できる街です。留学前は治安に対してやや不安な印象を持っていましたが、実際に住んでみると郊外は落ち着いており、安心して日常生活を送ることができています。公園、美術館、動物園など家族で過ごせる場所も多く、家族連れの日本人ポスドクも多いため、生活面でも恵まれた環境だと感じています。異国の地で優秀な日本人研究者と出会い、助け合う中で強い絆が生まれていることも、海外研究留学を通じて得られた非常に貴重な財産の一つです。

 

6.今後の展望

今回の留学経験を通じて得た知見や視点は、今後の研究人生において大きな財産になると感じています。将来的には、国際的な視野を持ちながら、腎臓分野における新たな治療や研究の発展に貢献できる研究者を目指したいと思います。また、この経験を活かし、微力ながら次世代の若手研究者を支える存在にもなれればと願っています。

 

7.おわりに

最後になりますが、このような貴重な機会を与えてくださった関係者の皆様、そして生活が大きく変化する中で渡米を支え、日々苦楽を共にしてくれている妻に、改めて深く御礼申し上げます。

 

研究室BBQは突然の大雨に見舞われ、忘れられない思い出となりました。

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